カフェという空間は、私にとって、ずっと特別でした。それは、まだ「喫茶店」と呼ばれていた少女時代、小学校の卒業文集の将来の夢には、「栄養士の資格を取得して喫茶店を経営」と書いたのをよく覚えています。最近になって、調理師ではなく、栄養士と書いたのは何故だろう?と考えたら、病人の多かった家庭に育ったせいかな?と思いました。中学1年生のお年玉でサイフォンとコーヒーミル、そして数種のコーヒー豆を買ったのも、よく覚えています。
一方、その夢は、割と早めに移り変わるのですが、カフェ愛はスクスク育ちます。宇都宮は昔からカクテルの街と呼ばれていますが、同時に栃木県そのものが、カフェの街といっても過言ではないほど、カフェ文化と名店の数々で知られています。そうした環境も愛を深めてくれ、ライターデビューから11年後に出版した拙著『台湾カフェ漫遊』へと繋がっていきました。私にとってカフェとは、「もうひとつの茶の間」であり、それぞれが理想の空間なのです。
さて、その「私」を作っているカフェの一部でもある益子の『starnet』を久しぶりに訪ねました。こちらは、すでに私が東京に移り住み、出版の道を歩んだ後に生まれたお店です。ああ、懐かしい。結論として、長く愛され、続いている店は、やっぱりブレてない。変わらない。
飲食だけでなく、セレクトショップも兼ねていて、当時はそれがまだ珍しかったように記憶します。今も器の類や食品、調味料などが売られています。オンラインショップもありますよ。
そして、ランチを兼ねて立ち寄りましたが、入って早々気になる品を見つけてしまった……。
お食事のメニューは、すごーく少なく(笑)、1種類。この日は、スタンダードメニューのおぼろ豆腐丼。これ、おいしいのよ。真岡市の『とうふ工房 豆三』さんのお豆腐、パリパリの油揚げ、甘辛いタレ、香ばしいごま油の香り、サラダのようにたっぷりの野菜が雑穀米の上に載っています。ドリンクは日替わりの梅スカッシュ。
そして、気になっちゃったものの話しね。スッカラなんです。
ショップエリアで見て、風合いも形もよく、心惹かれていたのですが、お食事の際に出て来て、「やっぱり買って帰ろう」と(笑)。経年経過した様子もすごく味わいがありました。なんでも韓国で作られたビンテージ品だそうです。この子たちが、今後、どんな表情を見せてくれるか、とても楽しみ。
益子という街は、時間の流れがゆっくりとしている感覚がありますが、『starnet』はもっとおっとりした空気感のある場所。読もうと思って持っていった若山牧水がよく似合う。
古本で買ったのですが、85ページにレシートが挟まっていました。
20年前に福島市の西沢書店で最初の主に売られた本。
誰かの記憶を覗いた気分にもなります。そこから長い旅をして私の手元へと届きました。牧水が綴った旅、この本の旅、そして私の旅が、このカフェで交叉したような気分になった瞬間でした。カフェと読書、それも幸せのひとつ。
starnet
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3278-1
電話番号:0285-72-2270
営業時間:11:00~18:00
定休日:木曜日
HP:https://www.starnet-bkds.com/
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