『ツィゴイネルワイゼン』といえば、私にとっては故・鈴木清順監督の大正浪漫三部作(ツィゴイネルワイゼン/陽炎座/夢二)の一作目を意味します。奇妙で、でも美しく淫靡で、嫌なあと味の残る、とても好きな映画です(笑)。こんな映画を16歳で見てしまったので、以降すっかり趣向が偏ります
映画で流れるサラサーテの名曲『ツィゴイネルワイゼン』は蓄音機のノイズの合間に浮き上がってはこもる独特な演出で物語の世界観を象徴しています。そう、病んだ音がいいんですよね。時折、サントラを聴いて懐かしんでいます。
この映画は内田百閒著の短編『サラサーテの盤』を基にしています。
主人公「私」の死んだ友人、中砂の後妻・おふさはいつも同じ時刻に夫の遺品を返して欲しいと訪ねて来るようになりました。そのうち、サラサーテ自奏による10インチ盤があるはずだといい出し諦めません。確かに「私」は盤の中に収録時の手違いかなにかでサラサーテの話し声が入っていると中砂から聞かされていたのでした……というのが本書の内容です。
映画を見てからもう38年も経つのに、その肝心の『サラサーテの盤』を読んでいなかったのを思い出し、手に取ったのは9月のこと。するとタイミングよくピアノ講師の横山朋子さんからカトリック鹿沼教会で開催される音楽会のご案内をいただきました。
チェンバロ奏者の横山博さんとバイオリニストの小山啓久さんによる競演。『ツィゴイネルワイゼン』も演奏されるというので行くのを決めました。旅にでると出たまま、地元にいると超出不精なんです その前に立ち寄ったのが日光珈琲 朱雀ね。
そして今日がその日。初めて訪れたカトリック鹿沼教会。美しいマリア様によく似あう、青いチェンバロ。癒しと許しの場所で聴いたのは澄んだ音色でした。
と、やっとこの日の出来事に繋がりました(笑)。
プログラムは以下。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068より第2曲エール 「G線上のアリア」(サラサーテ編曲)
ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番 ト長調BWV1019
Ⅰ.Allegro
Ⅱ.Largo
Ⅲ.Allegro(チェンバロ・ソロ)
Ⅳ.Adagio
Ⅴ.Allegro
ウジェーヌ・イザイ
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番ホ短調 作品27-4(フリッツ・クライスラーに捧ぐ)
Ⅰ.Allemande:Lento maestoso
Ⅱ.Sarabande:Quasi Lento
Ⅲ.Finale:Presto ma non troppo
フランソワ・クープラン
恋のナイチンゲール
ルイ・クープラン
「組曲ハ長調」より
サラバンド
パッサカイユ
愛の悲しみ
ルイ13世の歌とパカーヌ(ルイ・クープラン名義/偽名による作品)
パブロ・デ・サラサーテ
ツィゴイネルワイゼン
チェンバロもヴァイオリンも好きな楽器ですし、お二方の演奏は穏やかで、まるで脳をマッサージされた気分に。また小山さんがMCされたフリッツ・クライスラーの偽作騒動もおもしろく聞きました。
なにより教会の雰囲気と演奏でインスピレーションが湧き、貴重な時間となりました 芸術の秋、実りの秋。
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