秋の日、ヴィオロンのため息の……。
先週、シネスイッチ銀座でフランソワ・オゾン監督の新作『婚約者の友人』を見てきました。
1919年のドイツ。戦争で婚約者のフランツを失ったアンナは、彼の墓で泣いている青年と出逢います。フランス留学時代の「友人」だというアドリアン。最初は拒絶したフランツの父、母も含め家族ぐるみの付き合いが始まります。モノクロとカラーを絶妙に使い分け、彼女たちが重ねる「嘘」をオゾンならではの毒を交えて描きます。
アドリアンを演じた、つけ鼻みたいに鼻筋の通ったピエール・ニネ。初見だったのですが、オゾン好みのフランス青年、いいですねー。美しかったです。
そして、フランツがフランス語でアンナに教えたというポール・ヴェルレーヌの詩『秋の歌』、これがまた私にとってのビックリのタイミングで登場しました。それが冒頭の「秋の日、ヴィオロンのため息の……」。その詩に纏わる、すでに亡くなられた、ある方のお話をその直前までしていたので……「あ、やっぱりいらしていたんだな」とメッセージを感じました。いろんな意味で印象に残った作品。
日本発上映以来のオゾンファンとしては大ヒットした『8人の女たち』以降、ブラッシュアップされ、昔のシュールさやガツンと突きつけてくるエログロさが、懐かしく感じることも多々。当然、作品の好き嫌いもありますが、本作は割と好きなタイプ。不安感を煽る音楽も絶妙。
ちなみに過去の作品を勝手に星3つで評価(笑)。
・サマードレス Une robe d’ete (1997) ★★★
・海をみる Regarde la mer (1997) ★★★
・X2000 X2000 (1998) ★★★
・ホームドラマ Sitcom (1998) ★★★
・クリミナル・ラヴァーズ Les Amants criminels (1999) ★
・焼け石に水 Gouttes d’eau sur pierres brulantes (2000) ★★★
・まぼろし Sous le sable (2000) ★★★
・8人の女たち 8 femmes (2002) ★★
・スイミング・プール Swimming Pool (2003) ★★★
・ふたりの5つの分かれ路 5×2 (2004)
・ぼくを葬る Le Temps qui reste (2005) ★★★
・エンジェル Angel (2007)
・Ricky リッキー Ricky (2009)
・ムースの隠遁 Le Refuge (2010)
・しあわせの雨傘 Potiche (2010)
・危険なプロット Dans la maison (2012) ★★
・17歳 Jeune et Jolie (2013) ★★
・彼は秘密の女ともだち Une nouvelle amie(2014) ★★
・婚約者の友人 Frantz(2016) ★★
星なしもあります。好き故に辛口上等! とくにエンジェル~しあわせの雨傘までは私にとっては沈黙の時代(苦笑)。
一方でサマードレス、焼け石に水、スイミングプールとか、何度見ても飽きない、大好き♡ なので、そろそろ名作を上回る、仰け反るヤツ、お願いしますー、監督。
悲しみ、死、嘘、不安、絶望、混沌……とにかくオゾンは、負の感情を描くのがとても巧い。だから私は彼の映画を見続けているのだな、と改めて思いました。詳しくは映画館で(^^)v 全国で順次公開となります。お近くの映画館でぜひぜひ。
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