サクラ キミがいない春


春が来た。

開花宣言も出て、大手を振って春といえる季節になりました。

部屋のバラに梅や桃を合わせて活けていましたが昨日はフリージアと共に。タイ、チャチュンサオ県にあるワット・サマーンラタナラームから頂いてきた私の守り神、ピンクの寝ガネーシャ様もお喜びです。

この香りがいいですよね。などと書いていたら、ふと19歳の春を思い出しました。この花と共に眠っていた短い恋。でもなんでフリージア?と思って花について調べてみると……わかった。内緒です(笑)。

そして愛犬たち、グー(パピヨン)や菊(ミックス)がいない初めての春を迎えました。一昨年の冬に心臓病を患ったグーの容態は春になるとすぐれず「最後の桜になるかもしれない」「夏を迎えることができないかもしれない」と覚悟をしなくてはなりませんでした。


でも、先に逝ったのは菊でした。6月、バンコクに行く前にいつものように尻尾をブンブン振る菊に「私の出張の間、グーを守ってね」と伝えました。その1週間後、帰国した翌朝菊を見ると足元がおぼつかない様子で犬小屋からヨレヨレと出てきたのです。

驚いて病院に連れていくと脾臓に腫瘍ができていて手遅れだと告げられました。点滴を受けると元気を取り戻しましたが1ヶ月後僅か二日寝込み、初夏に旅立ちました。小さな弟にまるで命を授けるように。

グーは夏も秋も冬も、十分頑張りましたがこの1月28日に亡くなり、とうとうふたりのいない春がきてしまったのです。




彼らが我が家にやってきた約15年ほど前は、犬との付き合い方が大きく変わり始めた時期でもありました。ワンコと旅することを仕事にしたのも自身の暮らしの中から生まれた縁でした。

桜が咲くと嬉しくてグーと出かける。当たり前のようにあった春。

「グー、もうすぐ桜が咲くよ。一緒に見に行こう」

それが最後の5日間ずっと、そして死の直後もグーに話しかけ続けた言葉。明日がある、未来を信じたいという願い。

半世紀、ペットのいることが当たり前だった生活が変わろうとしています。一番堪えるのが眠る前、そして目覚め。「グー、寝るよー」「グー、おはよう」、そうした日常のありきたりな出来事がなにより胸を刺すのです。ペットロスは用意に癒えるものではありませんが時間をかけて向き合っていくしかないと思っています。

近づく春爛漫。

「グー、もうすぐ桜が咲くよ」



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